この記事でわかること
- 頭金・手付金・諸費用の違いと私が実際にいくら出したか
- 諸費用をローンに上乗せする考え方とその理由
- 月次CFがマイナスでも買う理由
- 全コスト込みのリターンシミュレーション(5年・10年・15年×4パターン)
- S&P500と比較した場合の考え方
はじめに|この記事の対象読者
この記事は、月次CFが多少マイナスでも無理なく保有できる方を主な対象に書いています。目安としては、高年収の会社員や役員層をイメージしています。
この考え方は、月次CFの赤字を数年単位で許容できる高属性の方ほど相性が良いです。家族構成や生活コストによって状況は異なりますので、ご自身の家計状況と照らし合わせながら読んでください。
頭金・手付金・諸費用の違い
不動産投資を始めようとしたとき、最初に混乱するのが「頭金」「手付金」「諸費用」という3つの言葉です。それぞれ意味が異なります。
頭金
物件価格のうちローンを組まずに自己資金で払う部分のことです。一般的には物件価格の10〜20%が目安と言われていますが、属性や金融機関の方針によっては少額でも融資が通るケースがあります。
実務上は、自己資金ゼロではなく少額でも自己資金を入れる形が求められるケースがあります。私の場合は各物件とも頭金10万円で購入しました。これは金融機関や提携スキーム上の運用として求められた最低ラインです。
手付金
売買契約を締結する際に買主が売主に支払うお金です。契約が成立すれば物件価格の一部として充当されますが、買主都合でキャンセルした場合は没収されます。私は手付金を払った物件はありません。
諸費用
登記費用・ローン手数料・火災保険料などの購入に付随するコストです。一般的に物件価格の7〜10%程度が目安とされています。
私が実際にいくら出したか
6室購入した際の実際の支出をまとめるとこうなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 頭金 | 各物件10万円(全6室で60万円) |
| 手付金 | 0円(全物件) |
| 諸費用 | 全物件でローンに上乗せ(現金では払っていない。一部不動産会社の負担あり) |
| 不動産取得税 | 各物件購入後に約10〜20万円(ワンショット。エリアによって異なる) |
| 固定資産税・火災保険 | 保有期間中に毎年発生 |
つまり購入時に実際に現金で出したのは、頭金10万円のみです。
購入の数か月後に不動産取得税を1件あたり約20万円支払っています。
諸費用をローンに上乗せする考え方
私はすべての物件で諸費用をローンに上乗せしています。高属性で手元資金に余裕があるなら、現金を寝かせず運用に回す方が合理的だと考えているからです。
投資用不動産ローンの金利は2%前後です。一方、S&P500やオルカンなどのインデックスファンドに長期投資した場合の期待リターンは年6〜8%程度とされています。
2%の金利でお金を借りて、6〜8%で運用できる余力があるなら、現金で払うよりもローンに上乗せして手元資金を運用し続けた方が合理的という考え方です。
ただしこれは、手元資金を実際に運用できる方、かつ借入比率が高くなることを許容できる方向けの考え方です。手元資金に余裕がない場合や、借入が増えることへの心理的負担が大きい場合は、無理に上乗せする必要はありません。
月次CFがマイナスでも買う理由
不動産投資を批判する文脈でよく出てくるのが「毎月キャッシュフローがマイナスになる」という話です。しかしこれは当たり前のことです。
私の物件はすべて頭金10万円・フルローンに近い形で購入しています。この場合、月次CFがマイナスになるのはある意味当然です。自己資金をほとんど使わずにレバレッジをかけているわけですから、多少のマイナスは許容範囲です。
ただし私が物件を購入した当時と比べて、現在は物件価格・金利ともに上昇しており、月次CFのマイナス幅は大きくなっています。現在の市況では東京・川崎で月▲20,000〜25,000円、大阪で月▲8,000〜15,000円程度が平均的な水準になってきています。
このような状況でも不動産投資が成立する理由は、月次CFだけで判断しないからです。私が重視しているのは5〜10年のトータルで見たときの収支です。
- 家賃値上げによるキャッシュフローの改善
- 収益還元法上の物件価値の上昇
- 減価償却による節税効果
- 売却時のキャピタルゲイン
これらを合わせたトータルでプラスになるかどうかを計算した上で購入判断をしています。月次CFのマイナスは、あくまでトータル収支の中の一要素に過ぎません。
物件選びの判断軸全体については、こちらで詳しくまとめています。
👉 不動産投資における物件選びの5つの判断軸|6室購入した投資家の結論
シミュレーションの前提条件
今回は、実際に購入した東京23区の物件(プロパティエージェント・築約6年・2K・30㎡)をモデルに、より厳しく、より正直な前提でシミュレーションを組み直しました。
この物件の詳しい購入条件はこちらに書いています
👉金利1.74%・駅徒歩2分|都内築浅2Kをプロパティエージェントで買った話【体験談】
物件の前提
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 物件価格 | 4,020万円 |
| 当初家賃 | 128,000円(実質利回り約3.5%) |
| 頭金・借入額 | 頭金10万円、借入額4,090万円、期間35年 |
| 当初金利 | 1.74%(auじぶん銀行) |
| 当初管理費・修繕積立金・集金代行等 | 14,050円(集金代行は10年間無料) |
将来変動の前提
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金利 | 2年ごとに+0.25%、上限3.00%(5年ルール・125%ルール適用) |
| 家賃 | 2年ごとに+3,000円 |
| 修繕積立金 | 5年ごとに+3,000円 |
| 集金代行 | 10年間無料、11年目から月5,000円 |
| 空室 | 4年に1回、家賃1ヶ月分相当の損失を年換算 |
| 原状回復費用 | 4年に1回(空室と同じ頻度)、20万円を年換算 |
| 設備故障 | 10年に1回、50万円の修繕費を年換算 |
| 固定資産税 | 7万円/年 |
| 火災保険 | 年2,000円 |
| 毎年の必要経費 | 年30万円(通信費・交通費・自宅家賃の家事按分等) |
| 初年度諸費用・不動産取得税 | 諸費用80万円・不動産取得税20万円(初年度の経費として計上) |
| 減価償却 | 建物比率45%・残存耐用年数42年で計算 |
| 節税還付 | 不動産所得がマイナスの場合、税率43%(所得税33%+住民税10%)で還付 |
| 売却時コスト | 売却価格の10%(仲介手数料等) |
| 譲渡税 | 長期譲渡税率20.315% |
※家賃・金利の前提について:インフレによる金利上昇を踏まえ、家賃側も保守的な上昇幅(2年ごと+3,000円)を想定しています。実際の値上げ実績(東京①:11,000円、大阪①:16,500円)と比べても、控えめな数字です。
※修繕積立金の前提について:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)を参考に、段階増額積立方式の考え方を踏まえつつ、保守的な増額幅を設定しています。
※空室の前提について:株式会社タスの「賃貸住宅市場レポート」によると、東京23区の単身者向け住宅(ワンルーム・1K)の空室率TVIは、近年おおむね一桁台後半で推移しています。今回の想定(4年に1回・1ヶ月=稼働率約97.9%相当)は、駅近・築浅という好立地条件を踏まえつつも、やや厳しめの前提として設定しています。
減価償却・節税の仕組みについては、こちらで詳しく解説しています。
👉 不動産投資で節税を最大化する方法|減価償却・建物比率・地域選びの考え方
家賃と物件価値の関係(収益還元法)については、こちらで解説しています。
👉 不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み
利回りシナリオは、当初3.5%を基準に、以下4パターンを設定しました。
- 改善:3.3%
- 現状維持:3.5%
- 小幅悪化:3.7%
- 悪化:3.9%
この幅は、東京都心の実質利回り(過去の記事でも紹介した通り、おおむね3.3〜3.9%のレンジで推移してきた)を踏まえた現実的な範囲です。
シミュレーション結果
5年保有のシミュレーション
売却時の家賃:134,000円(購入時から+6,000円)
| 利回りシナリオ | 売却価格 | 純収益(税引後) | 単純年率 |
|---|---|---|---|
| 改善(3.3%) | 4,873万円 | 約458万円 | 約61.2% |
| 現状維持(3.5%) | 4,594万円 | 約259万円 | 約34.5% |
| 小幅悪化(3.7%) | 4,346万円 | 約81万円 | 約10.8% |
| 悪化(3.9%) | 4,123万円 | 約−102万円(赤字) | 約−13.7% |
5年での短期保有は、うまくいけば年率60%を超える非常に高いリターンになる一方、利回りが0.4%悪化するだけで赤字に転落する、ハイリスク・ハイリターンな構造です。
10年保有のシミュレーション
売却時の家賃:140,000円(購入時から+12,000円)
| 利回りシナリオ | 売却価格 | 純収益(税引後) | 単純年率 |
|---|---|---|---|
| 改善(3.3%) | 5,091万円 | 約803万円 | 約25.1% |
| 現状維持(3.5%) | 4,800万円 | 約594万円 | 約18.6% |
| 小幅悪化(3.7%) | 4,541万円 | 約408万円 | 約12.7% |
| 悪化(3.9%) | 4,308万円 | 約241万円 | 約7.5% |
10年保有になると、4パターンすべてでプラスに転換します。最も厳しい「悪化」シナリオでも、単純年率約7.5%というのは、後述するS&P500の長期平均とほぼ同水準です。
15年保有のシミュレーション
売却時の家賃:149,000円(購入時から+21,000円)
| 利回りシナリオ | 売却価格 | 純収益(税引後) | 単純年率 |
|---|---|---|---|
| 改善(3.3%) | 5,418万円 | 約1,215万円 | 約14.2% |
| 現状維持(3.5%) | 5,109万円 | 約993万円 | 約11.6% |
| 小幅悪化(3.7%) | 4,832万円 | 約795万円 | 約9.3% |
| 悪化(3.9%) | 4,585万円 | 約617万円 | 約7.2% |
15年保有では、年率のブレ幅がさらに縮小し、どのシナリオでも7%〜14%程度という、安定したレンジに収まります。
S&P500との比較で考えること
S&P500の長期平均リターンは年約7%とされています。
今回のシミュレーションでは、最も厳しい「悪化」シナリオでも、10年保有で年率約7.5%、15年保有で年率約7.2%という結果になりました。S&P500の長期平均を、厳しめの前提でもほぼ並ぶ水準です。
ここで一点、注意点があります。今回計算している不動産の「単純年率」は、最終的な利益を保有年数で単純に割っただけの数字です。一方、S&P500などのインデックス投資は、運用で得たリターンがそのまま再投資され、翌年以降はその増えた元本に対してさらにリターンが乗る「複利」で増えていきます。S&P500で年7%の複利運用を10年続けると、投資元本は約1.97倍になります。同じ「年率○%」でも、単純利回りと複利では長期になるほど実際の増え方に差が出るため、この記事の単純年率とS&P500の複利年率を数字の大小だけで単純比較するのはやや厳密さを欠きます。
ただ、それを踏まえても、今回の不動産のリターン(現状維持シナリオ・10年で自己資金の約1.86倍にあたる利益)は、複利換算したS&P500の期待値と比べても遜色ない水準です。
ただしこれは、借入を使ったレバレッジ効果によるものです。空室・金利上昇・家賃改定・売却価格などの前提に大きく左右されますし、流動性や手間・管理コストも株式投資とは大きく異なります。
また高いリターンを実現するには、家賃値上げ余地のある物件を選ぶ・更新タイミングを確認する・セカンドオピニオンを取るなど、能動的な判断が伴って初めて成立します。S&P500のようにほったらかしで実現できるわけではない点は正直に伝えておきます。
このシミュレーションから見えるメッセージ
正直に言うと、今の市況(金利上昇局面)は、不動産投資にとって決して追い風とは言えません。今回の前提でも、金利は1.74%から15年かけて3.00%まで上昇するという、かなり厳しめの想定を置いています。
ただ、金利が上がる局面は、同時にインフレが進む局面でもあります。インフレが進めば、不動産の資産価値も、家賃相場も、同じように上がっていく余地があります。
つまり重要なのは「金利が上がるかどうか」ではなく、「家賃を上げ続けられるかどうか」です。今回のシミュレーションが示しているのは、家賃を2年ごとに3,000円ずつ上げ続けることさえできれば、よほど極端な悪化(利回りが3.9%まで悪化するような事態)でない限り、10年・15年という保有期間で見た場合、再現性高くプラスの結果に着地するということです。
そしてこれは、逆に言えば上振れの余地も十分にあるということでもあります。もし将来的に利回りが改善する、あるいは金利がここまで上がらないという展開になれば、今回のシミュレーション以上のリターンが期待できます。実際、東京都心の実質利回りは過去7年で緩やかに低下(改善)してきた実績もあります。
大幅な市場悪化が起きたらどうするか
不動産は株式のような日々の時価変動で強制ロスカットされるわけではないため、ローン返済と保有コストを無理なく支えられる限り、相場回復まで保有を続けるという選択肢を取りやすい資産です。
もちろん空室が続く・金利が上昇する・修繕が重なる・本業収入が下がるといった状況が重なれば、持ち続けることが難しくなるケースもあります。余裕を持った資金計画を前提にした上での話です。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 初期費用 | 頭金10万円+不動産取得税約20万円が1物件あたりの目安 |
| 諸費用 | 手元資金に余裕があればローン上乗せが合理的な選択肢のひとつ |
| 月次CFマイナス | 頭金10万円なら当然。東京・川崎▲2〜2.5万円、大阪▲0.8〜1.5万円が現在の市況目安 |
| 5年保有 | 年率−13.7%〜61.2%と振れ幅が大きい。短期売却は金利上昇リスクに弱い |
| 10年保有 | 年率7.5%〜25.1%。悪化シナリオでもプラスを維持 |
| 15年保有 | 年率7.2%〜14.2%。最も安定したレンジ |
| S&P500との違い | 厳しめのシナリオでも遜色ない水準。ただし複利と単純年率の違いに注意、レバレッジ・能動的な管理が前提 |
| 最悪シナリオ対応 | 保有コストを支えられる限り、売らずに待つという選択肢がある |
不動産投資は月次CFのマイナスだけを見て判断するのは適切ではありません。レバレッジ・家賃値上げ・キャピタルゲイン・節税をトータルで見ることが重要です。ただしそれは、適切な物件選びと能動的な管理が伴って初めて成立します。
「物件選びや購入判断に迷っている」、「自分の年収・物件条件だとどうなるか知りたい」、「頭金10万円で本当に成立するのか相談したい」という方は、お気軽にお問い合わせください。

