この記事でわかること
- 家賃値上げが不動産投資において重要な理由
- 値上げできる物件・できない物件の違い
- 値上げのタイミングと管理会社ごとの注意点
- 値上げ幅の決め方(同マンション最高値を狙う戦略)
- 交渉のテクニック(東京・大阪の違いを含む)
- それでもダメな場合の法的手段
- 退去してもオーナーにとってラッキーな理由
はじめに|なぜ家賃値上げが重要なのか
不動産投資において家賃値上げは、月次CFの改善だけでなく物件価値そのものに直結します。
収益還元法では「物件価格=年間賃料収入÷利回り」で決まります。つまり家賃が上がれば物件価値も上がり、売却時のキャピタルゲインに直接影響します。
例えば家賃を月1万円上げると年間12万円の増収です。利回り4%で計算すると物件価値は約300万円上昇します。
月次CFの改善効果だけで見るのではなく、出口戦略まで含めたトータルで考えると、家賃値上げの重要性は非常に大きいです。
収益還元法についてはこちら
👉不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み
①値上げできる物件・できない物件
家賃値上げが成立するかどうかは、購入前の物件選びの段階で決まります。
値上げできる物件の条件
- 現在の家賃が同マンション内・周辺相場と比べて低く設定されている
- 特に、同一マンション内でより高い家賃の事例が複数確認できる
値上げが難しい可能性が高い物件の条件
- 現在の家賃がすでに相場の上限付近、または相場を上回っている
- 周辺相場と比較すると家賃は低いものの、同一マンション内ではすでに高い水準に設定されている
私が物件を購入する際に必ず確認するのが「家賃の値上げ余地があるか」という点です。
購入時点で入居者に貸し出されている家賃が相場より低く設定されている物件は、将来的に家賃を見直せる可能性があるため、収益改善の余地があるという意味では、むしろ有利な状態と考えています。
物件選びの判断軸についてはこちら
👉不動産投資の物件選びの判断軸を公開|6室購入した投資家の結論
②値上げのタイミング
基本は「退去時」、更新時も交渉は可能
家賃を見直すタイミングとして最も進めやすいのは、入居者が退去した後の募集時です。
退去後は新たな募集条件を設定できるため、相場に合わせた家賃で募集しやすくなります。
一方で、入居中でも契約更新のタイミングに家賃改定を提案することは可能です。ただし、普通借家契約では借地借家法のルールがあるため、オーナーが一方的に家賃を値上げできるわけではありません。入居者との合意が必要となるため、更新時の値上げは交渉になることを理解しておきましょう。
何ヶ月前から動くべきか
更新時に家賃改定を検討する場合は、遅くとも更新の3か月前までには管理会社へ相談することをおすすめします。
ただし、必要な期限は管理会社によって異なります。
私が所有している物件では、プロパティエージェントの管理物件は更新の7か月前に申し出が必要でした。このように管理会社ごとにルールが異なるため、購入後は早めに確認しておくことが大切です。
プロパティエージェントで購入した物件の記事はこちらで紹介しています。
👉金利1.74%・駅徒歩2分|都内築浅2Kをプロパティエージェントで買った話【体験談】
購入前に不動産会社に確認しておきたいこと
- 次回の契約更新日はいつか
- 家賃改定の申し出は更新の何か月前までか
- 申し出の方法(書面・専用フォームなど)
更新時期や手続きを把握していないと、家賃改定を検討したくてもタイミングを逃してしまうことがあります。購入前に確認しておくことで、将来の選択肢を広げることにつながります。
購入直後に更新が来てしまった失敗談はこちら
👉2年後に316万円の物件価値アップを狙う|大阪市・築浅1Kを80万円値引きで買った話【体験談】
③値上げ幅の決め方
周辺相場ではなく「同マンション最高値」を基準にする
値上げ幅を決める際は、周辺相場よりも同じマンション内での賃料水準を重視します。
同じマンションであれば、立地・築年数・設備・構造・マンションブランドなどの条件がほぼ共通しているため、最も比較しやすい基準になります。
一方で、同じエリア内でもマンションブランドやグレードが異なれば、家賃水準が大きく変わることも珍しくありません。そのため、周辺相場だけで判断すると、本来狙える家賃を見誤る可能性があります。
同マンション最高値の調べ方
方法①:管理会社・不動産会社に確認する
レインズ(不動産流通標準情報システム)には実際の成約賃料データが蓄積されています。レインズは不動産会社しか閲覧できないため、管理会社や不動産会社に「同じマンション・同じ間取りで、直近の成約賃料を教えていただけますか」と確認するのがおすすめです。
※ただし、購入時は不動産会社の話だけを鵜呑みにせず、複数の情報を照らし合わせて判断することをお奨めします。
方法②:LIFULL HOME’Sなどの募集情報を確認する
LIFULL HOME’Sなどの不動産ポータルサイトでは、同じマンションの募集履歴や現在の募集賃料を確認できる場合があります。
募集賃料は成約賃料とは異なりますが、「現在どのくらいの賃料で募集されているのか」を把握する目安として活用できます。管理会社からの情報とあわせて確認すると、より判断しやすくなります。
一気に最高値を目指して交渉する
値上げ幅については、私は同マンション内の成約事例を参考にしながら、まずは最高水準を目安に交渉することが多いです。
例えば、現在の家賃が9万円で、同マンション内の成約事例が11万円であれば、まずは11万円での改定を打診します。もちろん、そのまま受け入れられるケースばかりではありませんが、交渉の中で双方が納得できる金額に着地することも少なくありません。
値上げ交渉には退去のリスクもあります。しかし、もともとの家賃が相場より低い物件であれば、退去後に相場に近い家賃で再募集できる可能性があります。そのため、物件の立地や賃貸需要、現在の家賃水準などを総合的に見たうえで判断することが重要です。
つまり、「退去リスクがあるから値上げしない」のではなく、「退去した場合も含めて収支がどうなるか」を事前にシミュレーションしたうえで交渉することが大切だと考えています。
④交渉のテクニック(物件や入居者で条件は変わるが私はこうしました)
管理会社を経由して交渉する
交渉は基本的に管理会社を通じて行います。オーナーが直接入居者に連絡するのは関係悪化のリスクがあるため避けた方が無難です。
ただし、管理会社はあくまでも集金代行のため、交渉業務は契約の範囲外と断られてしまうケースもあります。
その場合には、追加でお金を払うか、直接交渉する必要があります。
断られることを前提に交渉する
大幅な値上げを提示すると当然断られますが、以下の順番で条件を提示して交渉していきます。
STEP0:まず家賃の値上げをシンプルに伝える
最初から更新料の免除などの条件を提示する必要はありません。まずはシンプルに「相場が〇〇万円まで上昇したため更新にあたり、賃料を〇〇円に改定します。」と伝えるだけです。
ここは上げてもよろしいでしょうか?と下手に出る必要はないです。
案外あっさり合意してもらえるケースもあります。最初から譲歩条件を出してしまうと交渉の余地がなくなるため、まずは希望の家賃をそのまま提示することが重要です。
断られた場合にはじめてSTEP1以降の条件を提示していきます。
STEP1:更新料をゼロもしくは、0.5か月分にする
更新料(更新時に入居者が払うお金、通常は家賃1ヶ月分)をゼロ、もしくは0.5か月分にすることを提案します。入居者にとって更新時に発生する一時的な大きな出費がなくなるため、月々の家賃が多少上がっても受け入れやすくなります。
STEP2:増額分を共益費に載せる
STEP1で決まらない場合は、家賃の増額分を「賃料」ではなく「共益費」に載せる提案をします。
まず入居者にとってのメリットを説明します。今回の更新料がゼロになることに加えて、増額分が共益費に載るため、2年後の更新料は今の賃料ベースで計算されます。つまり家賃が上がったとしても、更新料は新しい家賃ではなく今の賃料水準で計算されるということです。入居者にとって今回も次回も負担が増えにくい構造になっています。
オーナーにとってのメリットとしては、更新料をゼロにする場合、多くのケースでオーナーがその更新料を負担します。しかし増額分が共益費に載っているため、オーナーが負担する更新料は現状の賃料ベースのままで済みます。つまり家賃を上げながらも、更新料の負担額が増えないというメリットがあります。
多くの入居者は共益費に載せることのメリットをすぐには理解できません。ただ「増額分を共益費に載せます」と伝えるだけでは意味が伝わらないため、「今回の更新料はゼロになり、さらに2年後の更新料も今の賃料水準のまま計算されます」という点をきちんと説明することがポイントです。メリットを丁寧に伝えることで合意率が上がります。
※共益費の扱いは契約条件や管理会社の運用によって異なるため、事前確認が必要です。
なぜここまで交渉するのか
更新料を0.5にしたり、ゼロにしたりすると、一見オーナーの負担が増えるように見えます。しかし収益還元法の観点で考えると、話が変わります。
仮に家賃10万円の物件で、更新料ゼロとして10万円を負担してでも、家賃を5,000円上げることができれば、収益還元法上の物件価値は約150万円上昇します。1万円上げることができれば約300万円の上昇です。
たとえ1,000円の値上げであっても、収益還元法上では約30万円の物件価値上昇に相当します。
つまりどれだけ交渉コストをかけても、わずかでも家賃を上げることができれば十分ペイできる構造になっています。この考え方を持った上で、粘り強く交渉することが重要です。
交渉前にセカンドオピニオンへ相談しました
家賃の値上げ交渉を行う前に、まず現在の家賃が本当に相場と比べて低いのかを確認することが重要です。
相場を確認したうえで、「どの程度の金額を提示するのが妥当か」「どのような伝え方であれば入居者に納得してもらいやすいか」を整理してから交渉に進みます。
私はこうした判断をする際に、セカンドオピニオンとして相談しているファイナンシャルプランナーにも意見を聞きながら進めています。
実際に値上げ交渉を行う際には、提示金額だけでなく、管理会社や入居者へ送る文章の作り方についてもアドバイスをもらいました。
家賃交渉は、単純に「値上げしたい」と伝えればよいものではなく、入居者との関係性を維持しながら納得感のある伝え方をすることも大切です。
第三者の視点を取り入れることで、感情的な判断ではなく、根拠を持って交渉に臨めるようになります。
不動産投資のセカンドオピニオンの詳細レビュー記事はこちら
👉不動産投資で損しないために|買う前に相談すべきセカンドオピニオンサービス【実体験レビュー】
⑤それでも合意できない場合の選択肢
家賃の値上げ交渉は、基本的には入居者との話し合いによって合意を目指すことが望ましいです。
ただし、現在の賃料が周辺相場と比較して大きく乖離している場合など、状況によっては法的手続きを検討することも選択肢の一つになります。
借地借家法第32条では、土地や建物に対する租税などの負担の増減、経済事情の変動、近隣の同種物件の賃料との比較などによって、現在の賃料が不相当となった場合、賃料増額請求を行うことが認められています。
ただし、法的手続きは時間や費用がかかるため、すべてのケースで利用すべき方法ではありません。
法的手続きを検討する場合の費用感
賃料増額請求などの手続きを行う場合、弁護士費用や手続きに伴う費用が発生します。
弁護士へ依頼する場合は、着手金や報酬金として数十万円程度の費用がかかることがあります。また、ケースによっては不動産鑑定が必要となり、追加費用が発生する可能性もあります。
そのため、法的手続きを検討する際は、単純に「家賃を上げられるか」だけではなく、
- 現在の家賃と相場との差額
- 年間で増加する収益額
- 今後の保有期間
- 売却時への影響
などを総合的に考え、費用対効果を判断することが重要です。
例えば、月数千円の家賃改善でも、長期間保有する場合には累計収益に大きな差が生まれます。また、不動産投資では収益性の改善が売却時の評価に影響する可能性もあります。
一方で、法的手続きには時間や精神的な負担も伴います。そのため、まずは入居者との話し合いや、退去後に相場に合わせて再募集するなど、状況に応じた方法を検討することが大切です。
法的手続きは「必ず利用すべき方法」ではなく、通常の交渉では解決が難しく、かつ費用対効果が見込める場合に検討する最終的な選択肢と考えるべきです。手間を考えると争う合理性が小さいケースがあります。このことが法的手段の実質的な抑止力になります。
⑥退去は必ずしもマイナスではない
ここまで読んで「値上げ交渉をして退去されたら困る」と感じた方もいるかもしれません。
しかし、投資家目線で考えると、現在の家賃が相場と大きく乖離している物件の場合、退去後に新しい条件で募集できることが、収益改善の機会になるケースもあります。
新たな家賃水準で募集できる
入居中の値上げ交渉では、「現在の家賃からいくら上げるか」という話し合いになるため、入居者にとって負担感が出やすくなります。
一方で、退去後の新規募集では、その時点の市場環境を踏まえて新しい募集条件を設定できます。
例えば、現在の家賃が9万円で、同マンション内で12万円程度の成約・募集事例がある場合、次回募集時には12万円を基準に、さらに需要を見ながら条件設定を検討することが可能です。
もちろん、家賃を上げれば必ず入居者が決まるわけではありません。物件の立地や需要、周辺の募集状況を確認しながら、適切な賃料設定を行うことが重要です。
また、新しい条件で入居者が決まれば、その賃料は実際の成約事例となり、同じマンション内の賃料水準を判断する際の参考にもなります。
退去後の募集条件を工夫する
新規入居者を早期に獲得するためには、家賃だけではなく、入居者が契約しやすい条件を整えることも重要です。
例えば、
- 礼金を下げて初期費用を抑える
- 必要に応じてAD(広告料)を活用し、仲介会社が紹介しやすい環境を作る
などの方法があります。
家賃自体は市場に合わせた水準を維持しながら、初期費用や募集条件を調整することで、収益性と入居のしやすさのバランスを取ることができます。
収益改善による物件価値への影響
退去に伴って、原状回復費用や募集費用などが発生する可能性があります。
一方で、不動産投資では家賃収入の改善が物件価値に影響する場合があります。
例えば、収益還元法で利回り4%の物件として考えた場合、月1万円(年間12万円)の家賃改善は、単純計算で約300万円の収益価値に相当します。
もちろん、実際の売却価格は市場環境や物件の状態など様々な要素によって決まるため、必ず300万円価値が上昇するという意味ではありません。
しかし、毎月の家賃差額は長期間積み重なるため、退去リスクだけを見るのではなく、「退去後にどのような条件で再募集できるのか」「現在の家賃と相場との差がどの程度あるのか」を含めて判断することが重要です。
退去は必ずしもマイナスではなく、物件の収益性を見直す一つのタイミングとして捉えることもできます。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 値上げの重要性 | 月次CF改善だけでなく収益還元法上の物件価値向上に直結 |
| タイミング | 退去時が最も進めやすい。更新時の交渉も可能。遅くとも3ヶ月前・管理会社ルールを事前確認 |
| 値上げ幅 | 同マンション最高値を基準に一気に上げにいく |
| 交渉の順番 | 更新料ゼロ→共益費載せ |
| 法的手段 | 内容証明→調停→訴訟。費用は物件価値上昇でペイできる |
| 退去はプラス | 新規入居者に最高値設定・礼金ゼロ・AD活用で早期入居 |
家賃値上げは不動産投資の収益を最大化するための最重要アクションです。更新のタイミングを逃さず、段階的な交渉テクニックを使いながら積極的に進めていくことをおすすめします。
次回、私が実際に家賃を上げた事例をご紹介します。セカンドオピニオンのアドバイザーに相談しながら、どんな文章を送るか・どの交渉カードを使うかを一緒に考えて進めた結果、実際に月1万円以上の値上げを実現できた事例です。ぜひ参考にしてみてください。
交渉の進め方や文章に迷っている方は、ぜひご連絡・ご相談ください。
⚠️ ご注意
本記事は私自身の交渉体験・考え方を記録したものであり、貸主が自由に賃料を引き上げたり、入居者に更新拒絶・退去を求めたりできることを意味するものではありません。普通借家契約の場合、貸主による更新拒絶には正当事由が必要であり、賃料の増減額についても借地借家法上の要件を満たす必要があります。実際に交渉や法的手続きを検討する際は、必ず管理会社・弁護士等の専門家にご確認のうえ、契約内容や個別事情に応じて進めてください。

