家賃11,000円アップで物件価値377万円アップ|入居者との賃料改定交渉を公開

不動産投資

この記事で分かること

  • 家賃交渉で実際にどこまで値上げできるのか
  • 家賃増額の法的根拠と、交渉前に確認すべきポイント
  • 入居者から反論されたときの考え方と切り返し方
  • 募集賃料ではなく「成約賃料」が重要な理由
  • 家賃・更新料を組み合わせた選択肢提示のやり方
  • 家賃を上げることが物件価値にどう影響するか
  • 実際に1万1000円値上げで着地した交渉の流れ

「相場より安い家賃」は、交渉次第で上げられる

不動産投資をしていると、こんな悩みを抱えるオーナーは少なくありません。

「入居者がいるのはありがたいけど、相場より明らかに安い。でも家賃って上げられるの?」

結論から言うと、相場との乖離が大きく、契約内容や手順に問題がなければ、増額交渉は可能です。

しかも正しい手順を踏めば、法的にも問題なく進められます。

今回は、都内の築浅・駅徒歩数分のRC造1DKで、現行家賃111,500円を122,500円まで引き上げた実際の交渉プロセスを公開します。交渉のやり取り・使った根拠・提示した選択肢・最終着地まで、順を追ってお伝えします。

実際に購入した物件の詳しい条件(価格・値引き・融資条件)はこちらで公開しています。
👉 購入後377万円値上がり|東京23区・築浅1DKを160万円値引きで買った話【体験談】

一般的な家賃の上げ方・交渉テクニックはこちら
👉 投資用マンションの家賃を上げる方法|交渉テクニックと進め方を解説

※賃料増額の可否や進め方は、契約形態、契約条項、地域相場、交渉経緯によって異なります。実際に増額交渉を行う際は、管理会社や弁護士などの専門家に確認のうえ進めてください。


家賃を上げる法的根拠:借地借家法32条

まず大前提を押さえておきましょう。

賃貸借契約の内容を変更する場合、原則として両者の合意が必要です。どちらか一方が「上げたい」「下げたい」と言っても、相手が応じなければ変更できないのが基本ルールです。

しかし、この原則には例外があります。それが借地借家法第32条の「賃料増減額請求権」です。

この賃料増減額請求権は、法律に規定する要件を満たした場合は、他方当事者の同意なしに、賃料の増減額の効力が発生します。この一方的な意思表示によって賃料増減額の効力が生じるという点が賃料増減額請求権のポイントです。 Orangeline-law

つまり、相場や経済事情などから見て現在の賃料が不相当といえる場合には、貸主側から増額請求を行う余地があります。

具体的な要件は以下の3つです。

  • 固定資産税・都市計画税などの負担の増減
  • 土地・建物の価格上昇など経済事情の変動
  • 近隣の類似物件の賃料と比較して不相当となった場合

ただし、ワンルームマンション投資において実務上最も重要になるのは、同一マンションや周辺の類似物件と比較した賃料相場との乖離です。

固定資産税や経済事情の変動についても判断材料にはなりますが、ワンルームでは家賃相場への影響を直接示しにくいため、単独での根拠としては限定的です。

また、管理費や修繕積立金など所有コストの上昇についても、それだけで増額が認められるわけではありません。物件を取り巻く経済状況の変化を示す一つの事情として、他の要素と合わせて総合的に判断されます。

※ただし「一定期間賃料を増額しない」という特約が契約に含まれている場合は増額請求できません。また借主が同意しない場合は調停・訴訟という流れになります。あくまで「請求できる権利」であり、自動的に上がるわけではありません。請求が認められるかどうかは、契約内容・近隣事例の強さ・借主の対応によっても変わります。実際の交渉では、この法的根拠を背景に持ちながら、いかに合意に持ち込むかが重要になります。

今回のケースは3つ目、近隣相場との乖離が主な根拠です。現行111,500円に対して近隣相場が13万円前後であったため、増額交渉を進める根拠として十分と判断しました。


交渉スタート:まず13万円を提示

管理会社経由で入居者に対して、13万円への増額を正式に提示しました。

ただし、最初から13万円で合意できるとは思っていませんでした。交渉において重要なのは、相場の範囲内で少し高めの数字をアンカー(基準点)として提示することです。

最初から着地点を提示してしまうと、そこからさらに値下げ交渉が始まります。相場に即した13万円を起点として提示することで、交渉の落としどころを12万円〜12万5,000円あたりに自然に誘導できます。

最初の提示が高すぎると非現実的に見えて信頼を失いますが、相場の範囲内であれば根拠として成立します。これがアンカリングの考え方です。

添えた理由は以下です。

  • 近隣エリアの地価・物件相場の上昇
  • 物件の管理・維持コストの増加
  • 同マンション内で13万円前後での成約実績が複数あること

締切を設けた上で承諾を求める形で送りました。


入居者からの反論:「上階の広い部屋が12万円で募集中ですよ」

数日後、入居者から返答が来ました。要約すると以下です。

「同マンションの上階かつ広い部屋が12万円で空室になっています。それを考えると13万円は割高です。現行家賃での据え置きをお願いしたい」

一見するともっともらしい反論です。ただ、この反論によって、少なくとも同マンション内で12万円台が比較対象になることは確認できました。現行の11万1,500円がその水準を下回っているという事実は変わりません。


有力な根拠:業者間ポータルの成約実績

入居者の反論に対して、こちらは「募集賃料」と「成約賃料」の違いを軸に返答しました。

募集賃料はあくまで「希望価格」に過ぎません。実際に契約が成立した成約賃料こそが相場の根拠になります。」

不動産会社のみが閲覧できる業者間ポータルサイトで同マンションの直近成約事例を確認したところ、以下の実績が確認されました。

  • 直近成約事例①:13万円成約
  • 直近成約事例②:13万円成約

これを根拠として提示した上で、「13万円が現在の客観的な相場水準」であることを明示しました。

募集賃料ではなく成約実績を示すことで、交渉の根拠がより明確になります。


交渉の進め方:「決める」のではなく「選ばせる」

ここが今回の交渉で最も重要なポイントです。

単純に「13万円でお願いします」と押し付けるのではなく、入居者に選択肢を提示しました。

【選択肢①】
家賃:13万円
更新料:今回免除
次回更新料:現行据え置き

【選択肢②】
家賃:12万5,000円
更新料:全額あり

ポイントは初年度の実質負担を計算すると①の方が安くなる設計にしたことです。「12万5,000円の方が安い」と思っている入居者に、数字で①を選ぶ合理性を示しました。

また自身の経験から、更新料という家賃1月分の大きなお金が免除されるというのもキャッシュフロー的にはありがたいはずだと判断しました。

そして、さらにこう添えました。

「いずれの条件でもご承諾いただけない場合には、12万円を根拠として弁護士を通じた法的対応も視野に入れた通知を行わせていただきます。また、いずれの条件でのご更新も難しい場合は、契約満了に伴う退去についてもご検討いただけますようお願い申し上げます」

※実際の文面は契約形態や個別事情に応じて、管理会社・弁護士に確認のうえ作成することをおすすめします。
※普通借家契約では、貸主側から自由に更新拒絶できるわけではありません。退去に関する取り扱いは契約形態や個別事情によって異なります

選択肢を与えることで入居者の心理的抵抗を下げつつ、法的対応という選択肢も丁寧に伝える。 これが交渉を前進させました。


法的対応を視野に入れた通知はどこまで許されるか

「弁護士を通じた法的対応も視野に入れる」という一文に抵抗を感じるオーナーもいるかもしれません。しかしこれは合法であり、正当な権利行使の予告です。

「法的措置を取る」という予告は、法的根拠のある請求を行う意思表示に過ぎません。脅迫や強要とは全く異なります。ただし「退去させる」「信用情報に傷をつける」など法的根拠のない不利益を示唆する表現は問題になるため注意が必要です。

相場の成約実績という根拠が揃っている状態でこの意思を伝えることで、借主側としても、成約実績などの客観的根拠が示されることで、争った場合の見通しを慎重に考えざるを得なくなります。


入居者からの逆提案と、第二回の選択肢提示

入居者から再度返答が来ました。

「12万円・更新料免除であれば合意します」

家賃については13万円から12万円への引き下げ要求です。ここでこちらは再び選択肢を提示しました。

【選択肢①】
家賃:12万5,000円
更新料:免除

【選択肢②】
家賃:12万2,500円
更新料:0.5か月分

【選択肢③】
家賃:12万円
更新料:全額あり

そして再度、いずれも選べない場合は法的対応・退去もご検討くださいと丁寧に伝えました。

交渉の主導権を保ちながら、入居者に「選ぶ」立場を与え続けることが重要です。


最終着地:家賃12万2,500円・更新料免除

最終的に12万2,500円・更新料免除での合意となりました。

実は当初、更新料0.5ヶ月分はしっかり貰うつもりでした。更新料が免除されると、その分オーナーである自分の取り分が減ると思っていたからです。

ところが確認したところ、更新料の扱いはB社(管理会社)の損益に帰属する契約になっていることがわかりました。一般的には、入居者から更新料を回収できなかった場合にオーナーが負担するケースが多いのですが、B社との契約では、更新料が取れた場合もB社の収入となり、取れなかった場合もオーナーに負担が生じない仕組みになっていました。つまりオーナーである自分には、更新料の有無がそもそも関係なかったのです。それを踏まえて、更新料の交渉はせず、家賃12万2,500円・更新料免除という条件でそのまま合意することにしました。 

このあたりの契約内容は購入前には知らなかった部分で、更新料をオーナーに負担させずに管理会社側で吸収してくれるという点に、B社のサービスの手厚さを改めて感じました。

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そして合意と同時に、こう伝えました。

「なお、現在の成約相場が13万円前後であることを踏まえ、2年後の次回更新時においても、改めて賃料の見直しをお願いする予定です」

合意の瞬間に次の交渉の布石を打つことも、長期的な資産管理において重要な一手です。

更新料免除は”譲歩”に見えて、実は合理的な選択肢

今回の交渉で更新料は免除という形で着地しましたが、ここで多くのオーナーが見落としているポイントをお伝えします。

更新料免除は、一見するとオーナーの負担に見えますが、家賃増額と組み合わせると十分に合理的な選択肢になります。

収益還元法という不動産の価格算出方法があります。簡単に言うと、家賃収入から物件価格を逆算する考え方です。この物件の実質利回り(値引き前ベース)は約3.5%で、この利回りで計算すると、家賃を
月1,000円上げると物件価格は約34万円上がります。

今回の増額幅は月11,000円です。計算するとこうなります。

11,000円 × 12ヶ月 ÷ 3.5% = 物件価格+約377万円

実際の売却価格はエリアの利回り水準・築年数・管理状態・買主の評価によって変動しますが、収益還元法上はこの程度のインパクトがあります。

一方、更新料免除といった「入居者への譲歩」のコストはせいぜい10万円程度です。家賃を少し上げるだけでその負担を十分に回収できる計算になります。

交渉が難航したとき、「更新料を免除する代わりに家賃を上げる」という提案は入居者にとって魅力的に映り、かつオーナーにとっても合理的です。このカードの存在を知っているかどうかで、交渉の幅が大きく変わります。

物件選びの段階から「家賃の値上げ余地があるか」を確認することが、こうした交渉を有利に進める前提になります。判断軸についてはこちらで詳しく書いています。
👉 不動産投資の物件選びの判断軸を公開|6室購入した投資家の結論 

収益還元法の考え方についてはこちらで解説しています。
👉 不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み 


退去という選択肢が、結果的に合理的な場合もある

「退去についてもご検討ください」という一文を入れているのには、もう一つ重要な理由があります。

実は退去してもらうことが、オーナーにとって最も有利な結果になる可能性が高いのです。

なぜかというと、現在の入居者がいる限り、家賃の増額には原則入居者との合意が必要です。どれだけ交渉しても、着地点は現行家賃からの小幅な増額にとどまります。

しかし退去となると、次の入居者に対して家賃を自由に設定できます。

たとえば同物件の成約事例の最高値が13万2,000円であれば、13万2,000円で設定することができます。さらに13万5,000〜14万円の設定も可能ですし、すぐに入居を付けたい場合は礼金をなくす等の対応をする形で初期費用を下げると、入居者にとっての魅力を保ちながら家賃水準を高く設定することができます。

もちろん退去された場合は空室期間が発生します。2ヶ月の空室と清掃費用などを合わせると30万円前後のコストがかかります。しかしそれを差し引いても、資産価値上昇と比べれば十分にペイできる計算です。

だからこそ「退去もご検討ください」という一文は、単なる最終通告ではなく、オーナーとしてどちらに転んでも損をしない状況を作るという意味を持っています。


まとめ

今回の交渉の成果をまとめます。

  • 月次収入:+11,000円
  • 年間収入:+132,000円
  • 物件価値:+約377万円(収益還元法ベース)

そして今回の交渉を通じて見えてきた4つの原則がこちらです。

原則① 成約実績を必ず取得する

募集賃料ではなく成約賃料が相場の根拠になります。業者間ポータルの成約データは管理会社に依頼すれば取得できます。

原則② 選択肢を与えて選ばせる

「〇〇円にしてください」と一方的に押し付けるのではなく、複数の選択肢を提示することで入居者の心理的抵抗を下げられます。初年度実質負担を計算して「どちらが得か」を数字で示すことが重要です。

原則③ 更新料免除は合理的な交渉カードになる

一見するとオーナーの負担に見えますが、家賃増額による資産価値インパクトを理解した上で使うと、交渉を有利に進める有効な選択肢になります。

原則④ 退去後の再募集が有利になるケースもある

退去してもらえば、次の入居者に対して家賃を自由に設定できます。空室期間のコストはかかりますが、家賃を自由に設定できるため、物件価格の最大化につながります。

家賃交渉は、正しい根拠と順序を押さえれば、必要以上に恐れるものではありません。

正しい根拠と順序があれば、入居者との関係を大きく壊すことなく、着実に物件価格を高めることができます。

今回の物件を紹介してもらった完全紹介制B社の詳細レビューはこちらです。
👉 完全紹介制B社の評判・口コミ|実際に3件購入した投資家がレビュー

どの会社で物件を購入するかについては、6社を実際に比較した記事もあわせてご覧ください。
👉 不動産投資会社おすすめランキング6社比較|実際に買った投資家の結論


交渉前にセカンドオピニオンへ相談しました

家賃の値上げ交渉を行う前に、まず現在の家賃が本当に相場と比べて低いのかを確認することが重要です。

相場を確認したうえで、「どの程度の金額を提示するのが妥当か」「どのような伝え方であれば入居者に納得してもらいやすいか」を整理してから交渉に進みます。

私はこうした判断をする際に、セカンドオピニオンとして相談しているファイナンシャルプランナーにも意見を聞きながら進めています。

実際に値上げ交渉を行う際には、提示金額だけでなく、管理会社や入居者へ送る文章の作り方についてもアドバイスをもらいました。

家賃交渉は、単純に「値上げしたい」と伝えればよいものではなく、入居者との関係性を維持しながら納得感のある伝え方をすることも大切です。

第三者の視点を取り入れることで、感情的な判断ではなく、根拠を持って交渉に臨めるようになります。

セカンドオピニオンについて知らない方は、ぜひこちらの記事をご参照ください。

不動産投資のセカンドオピニオンの詳細レビュー記事はこちら
👉不動産投資で損しないために|買う前に相談すべきセカンドオピニオンサービス【実体験レビュー】

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⚠️ ご注意
本記事は私自身の交渉体験・考え方を記録したものであり、貸主が自由に賃料を引き上げたり、入居者に更新拒絶・退去を求めたりできることを意味するものではありません。普通借家契約の場合、貸主による更新拒絶には正当事由が必要であり、賃料の増減額についても借地借家法上の要件を満たす必要があります。実際に交渉や法的手続きを検討する際は、必ず管理会社・弁護士等の専門家にご確認のうえ、契約内容や個別事情に応じて進めてください。

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