修繕積立金は今後上がる?|重要事項調査報告書の見方と、実際に計算してみた結果

不動産投資

この記事で分かること

  • 重要事項調査報告書のどこを見れば、修繕積立金の値上げリスクが分かるのか
  • 国交省ガイドラインを使って「今の積立額が十分か」を計算する一般的な方法
  • 重要事項調査報告書ならではの情報から、さらに何が読み取れるのか
  • 実際に自分の保有する2物件で見えてきたこと
  • だからこそ、購入時にどんな物件を選ぶべきか

投資用不動産の価値は、収益還元法で決まります。年間家賃を利回りで割り戻すという、あの計算方法です。
👉 不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み

だとすると、物件価値を上げる方法は理屈の上ではシンプルで、分子である家賃を上げること。これは家賃交渉シリーズで何度か書いてきた通りです。
👉 投資用マンションの家賃を上げる方法|交渉テクニックと進め方を解説


ただ、収益還元法にはもう一つ、家賃と同じくらい重要な前提があります。それは、管理費・修繕積立金が想定以上に膨らまないことです。同じ家賃でも、管理費・修繕積立金が上がれば実質的な収益は目減りしますし、将来大きな一時金が必要になれば、それだけで収支計画は崩れます。

では、この「修繕積立金が今後上がりそうかどうか」は、購入前にどうやって判断すればいいのか。そのための重要な材料の一つが、重要事項調査報告書です。今回は、この書類のどこを見て、どう判断するのかを整理してみます。

※本記事の計算方法は、あくまで筆者自身の考え方に基づく所感です。修繕積立金は、専有面積や戸数に応じた単純な按分(戸当たり×円)で設定されているとは限らず、築年数、階数、住戸タイプ、長期修繕計画の内容などに応じて、マンションごとに個別の算定方法が採用されている場合もあります。ご参考程度にご覧いただき、実際の判断にあたっては、個別の重要事項調査報告書や管理組合の資料をご確認ください。

まず、書類のどこを見るか

重要事項調査報告書には、修繕積立金の現状に関する項目がいくつかあります。私が見るのは主にこの4点です。

  • 大規模修繕工事の実施予定・検討中の有無
  • 管理費等の改定予定・検討中の有無
  • 修繕積立金の残高、月額
  • 過去の値上げ履歴の有無

ここで最初に意識しておきたいのは、「予定なし」「検討中なし」という欄があっても、それだけで安心はできないということです。総会で承認された直後は、書類の記載が更新される前に実際の値上げが既に動いていることがあります。今回の2物件でも、まさにこのパターンが起きていました。

判断のやり方は、大きく2パターンあります。一つは、誰でも使える一般的な方法。もう一つは、重要事項調査報告書に載っている情報を使う方法です。順番に見ていきます。

①一般的な方法:国交省ガイドラインと比較する

国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、専有面積あたりの月額の目安(円/㎡・月)が、建物の規模ごとに示されています。小〜中規模のマンションでは、目安はおおむね300円台/㎡・月です。

自分の部屋の専有面積は、重要事項説明書や登記簿にそのまま記載されているので、それをこの単価にかければ、目安の月額が出ます。

自分の部屋の専有面積 × ガイドラインの単価 = その部屋の目安額

例えば、専有面積25㎡の部屋で、ガイドラインの目安が300円/㎡・月だとすると、目安の月額は7,500円です。もし今の修繕積立金が3,000円なら、目安のちょうど40%ということになります。

専有面積がすぐに分からない場合は、延床面積と総戸数から概算する方法もあります。例えば、延床面積5,000㎡・総戸数100戸のマンションだとします。延床面積の85%程度が専有部分の合計とみなすと、専有面積の合計はおよそ4,250㎡。これを総戸数100戸で割ると、1戸あたりの平均専有面積は42.5㎡です。

42.5㎡ × 300円 = 月額12,750円

これが、この規模のマンションにおける戸当たりの目安額になります。もし今の修繕積立金が月5,000円なら、目安のおよそ39%ということになります。

これで、「自分の物件の積立額が、ガイドラインの目安の何%にあたるか」が計算できます。この方法は誰でも同じように使える一般的なやり方ですが、あくまで「今この瞬間の月額」を切り取った、一時点のスナップショットにすぎません。

②重要事項調査報告書を読む

②-1:積立の”実績”と”履歴”を見る

ガイドライン比較だけでは分からないことがあります。それは、その物件の積立が、これまでどう積み上がってきたか、そしてこれからどう動きそうか、という時間軸の情報です。これは、重要事項調査報告書を実際に読み込まないと出てきません。

修繕積立金の多くは「段階増額積立方式」といって、新築〜築浅の時期はあえて低く設定し、大規模修繕が近づくにつれて段階的に引き上げていく仕組みになっています。つまり、今の月額がガイドラインの目安より低くても、それが最初から計画された増額カーブの序盤にいるだけなら、必ずしも異常ではありません。

そこで、重要事項調査報告書に載っている積立残高・築年数・値上げ履歴といった数字を使って、これまでの積立ペースや、段階増額のどの段階にいるのかを見ていきます。具体的な計算のやり方は物件によって前提が変わってくるので、この記事では詳しい計算式までは書きませんが、実際に私はこれらの数字を使って、以下のような視点で判断しています。

  • 今の積立残高は、これまでの築年数に対して妥当なペースで積み上がっているか
  • すでに値上げが実施された履歴があるか(あれば、計画通りに機能している証拠になる)
  • 大規模修繕の周期(一般的に12〜15年)に対して、今どのタイミングにいるか

このあたりの細かい計算やチェックの仕方は、次で紹介するセカンドオピニオンで実際にファイナンシャルプランナーと一緒に整理しています。

②-2:築年数と重ねて、総合判断する

最後に、ここまでの比率・積立ペース・値上げ履歴を、築年数・大規模修繕の実施履歴と重ねて見ます。大規模修繕は一般的に12〜15年周期なので、その周期に近づいているのにガイドライン比率が低いままなら、値上げや一時金のリスクが高まっている、という見方ができます。

実際に、自分の2物件で計算してみました

ここからは、実際に自分が保有している東京②、川崎②の重要事項調査報告書を使って計算してみます。

川崎②

築約9年、これまで管理費・修繕積立金ともに大きな見直しはされていませんでした。今年、総会で修繕積立金の改定案が承認され、すでに新しい金額に切り替わっています。

改定前の水準を国交省ガイドラインと比較すると、目安の3割台にとどまっていました。今回の改定後でも、目安の5割程度で、依然としてガイドラインには届いていません。

川崎②の物件についてはこちらで詳しく紹介しています。
👉 購入と同時に物件価格+100万円|川崎1Kを110万円値引きで買った話【体験談】

東京②

築約6年とまだ新しく、大規模修繕工事の予定・検討中はいずれも「無」でした。ただし管理費等の改定予定は「検討中」となっており、修繕積立金は今年すでに値上げが実施されています。

値上げ後の水準を国交省ガイドラインと比較すると、目安の1割台という結果でした。

この2物件を比較すると、川崎②は「値上げに動いている」段階、東京②は「値上げ済みだが、それでも目安からかなり遠い」段階、という違いはありますが、どちらも国交省ガイドラインの目安を大きく下回っているという点では共通しています。

東京②の物件についてはこちらで詳しく紹介しています。
👉 金利1.74%・駅徒歩2分|都内築浅2Kをプロパティエージェントで買った話【体験談】

正直、購入時にはここまで見切れていませんでした

今回この2物件を計算してみて改めて感じたのは、購入を検討していた当時、ここまで踏み込んで見ていなかった、ということです。

利回りや家賃、値引き額には目が行っていましたが、修繕積立金がガイドラインに対して何%の水準なのかまでは計算していませんでした。重要事項調査報告書自体は受け取っていても、そこから「将来上がりそうかどうか」を数字で判断するところまでは、当時できていなかったというのが正直なところです。

しかも、修繕コストそのものが上がっている

もう一つ意識しておきたいのが、今回使った国交省ガイドラインの目安自体、今後さらに引き上げられていく可能性があるということです。

資材価格の上昇、建設業界の人手不足による工事費・人件費の上昇は、築年数や管理組合の運営方針とは関係なく、どの物件でも今後の大規模修繕コストを押し上げる方向に働きます。つまり「今の水準はガイドラインの半分だから、まだ余裕がある」と思っていても、数年後にはその基準自体が変わっている可能性があります。

自分だけでやる必要はない:セカンドオピニオン

正直に言うと、②で紹介した重要事項調査報告書からの読み取り、特に積立ペースや段階増額のどの段階にいるかという判断は、自分ひとりでやり切るにはかなり骨が折れます。物件ごとに前提条件が違い、書類の書式や粒度もバラバラだからです。

今回は、普段から物件の相談をしているファイナンシャルプランナーにセカンドオピニオンとして手伝ってもらいながら、この計算の考え方を整理しました。第三者の視点で数字をチェックしてもらうことで、自分だけでは見落としていたポイントにも気づけました。

重要事項調査報告書の細かい読み方や、実際の積立ペースの計算は、正直かなり手間がかかります。「この物件、実際どうなんだろう」と迷ったときは、こうしたファイナンシャルプランナーのセカンドオピニオンを使って確認してもらうのも一つの手だと思います。

セカンドオピニオンを実際に使ってみて具体的に良かったことはこちらにまとめています。
👉 不動産投資で損しないために|買う前に相談すべきセカンドオピニオンサービス【実体験レビュー】
👉 その物件、本当に買って大丈夫?|セカンドオピニオンを取って良かった4つのこと

だからこそ、家賃の値上げ余地が大きい物件を選ぶ

修繕積立金や管理費は、今後も資材高騰や人件費上昇によって上がっていく可能性が高いです。これは金利と同じで、自分でコントロールできるものではありません。

だからこそ大事なのは、「今の積立金が高いか安いか」だけで物件を判断するのではなく、その先で発生するコスト増を、家賃の値上げでどこまで吸収できる物件なのか、という視点だと思っています。

家賃が周辺相場より安い物件は、将来値上げできる余地があります。管理費や修繕積立金が上がっても、その分を家賃に反映できれば、収支への影響を抑えられます。逆に、すでに家賃が相場の上限に近い物件は、コストが上がってもそれを吸収する手段がありません。

私が実際に複数の部屋で家賃値上げを実現できているのも、もともと相場より安い家賃の物件を選んでいたからです。修繕積立金や管理費というコスト側の変動を完全に読み切ることはできなくても、家賃という収入側に伸びしろがある物件を選んでおけば、その変動を吸収できる余地を自分で作れます。

まとめ|修繕積立金は「今の金額」より「積立ペース」と「家賃の余地」で見る

今回、自分が保有する2物件を使って、修繕積立金の将来リスクを見る2つの方法を整理してみました。

  • 一般的な方法:国交省ガイドラインと今の月額を比較する
  • 重要事項調査報告書を読む方法:積立の実績ペースや値上げ履歴から、段階増額のどの段階にいるかを見る

この計算を実際にやってみると、2物件ともガイドラインの目安を大きく下回っていることが分かりました。正直、購入時点ではここまで見切れていませんでした。

そして、資材高騰・人件費上昇という構造的な要因もあり、修繕積立金の値上げ圧力は今後も続いていく可能性が高いと感じています。

だからこそ結局のところ、修繕積立金がいくらまで上がるかを正確に予測することよりも、多少上がっても耐えられる物件かどうかを、購入前に見ておくことの方が重要だと思っています。その耐性を作るのが、家賃の値上げ余地がある物件を選ぶという判断です。

6室すべての築年数・購入時期・家賃上昇余地などについてはこちらにまとめています。
👉 購入した6室、全データ公開|東京・川崎・大阪、値引き・値上げ・物件価値の実績まとめ


重要事項調査報告書の読み解きや、修繕積立金が今後どうなりそうかの判断は、正直ひとりでやるには手間がかかります。ご自身の物件について確認したい方は、お気軽にご相談ください。

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