この記事で分かること
- 6室それぞれ、5年後・10年後に売却したら、いくら手残りになるのか
- 「家賃を上げるかどうか」で、結果がどれだけ変わるのか
- 利回りが±0.1%動いたら、結果はどう変わるのか
- 6室合計で見た場合の、自己資金に対する単純年率
- 「業者買取10%」という前提自体を、どう良くできるか
以前、「投資用マンションは5年で売るべき?」という記事で、出口戦略の考え方を整理しました。あの記事は「いつ、どう判断するか」という考え方の記事でした。
👉 投資用マンションは5年で売るべき?|6室保有して考えた「本当の売り時」
今回はその実践編です。実際に自分が保有している6室について、5年後・10年後に売却したらいくらになるのか、家賃・金利・利回りの前提を変えながら計算してみます。
毎月の赤字をどう捉えるかについてはこちらで詳しく解説しています。
👉 毎月赤字でもワンルームを6室買った理由|持ち出し48万円で残債329万円減?
シミュレーションの前提条件
今回は2つの家賃シナリオで計算しています。
1つ目は「家賃据え置きシナリオ」で、現在の家賃のまま変わらないという前提です。
2つ目は「家賃上昇シナリオ」で、東京①・大阪①は2年ごとに+3,000円、他4室は最初の2年で市場家賃まで+1万円、その後2年ごとに+3,000円という前提で計算しています。
東京①と大阪①は既に市場家賃レベルへの家賃アップを実現しているため、上記のような前提としています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金利 | 2年ごとに+0.25%、上限3.00%(5年ルール・125%ルール適用、両シナリオ共通) |
| 修繕積立金 | 5年ごとに+3,000円 |
| 空室 | 4年に1回、家賃1ヶ月分相当の損失(年換算) |
| 原状回復費用 | 4年に1回、20万円(年換算) |
| 設備故障 | 10年に1回、50万円(年換算) |
| 固定資産税 | 7万円/年 |
| 火災保険 | 年2,000円 |
| 不動産取得税 | 初年度に一律20万円 |
| 売却価格 | 収益還元法の理論値から、業者の利益として10%を差し引いた金額(業者買取想定) |
| 譲渡税 | 長期譲渡税率20.315% |
家賃の上げ幅は、それぞれの物件レビュー記事で書いた値上げ余地(周辺相場との差)をもとにしています。
👉 購入した6室の全データ公開|東京・川崎・大阪、値引き・値上げ・物件価値の実績まとめ
まず「家賃を上げるかどうか」で比較する
6室それぞれ、家賃据え置きシナリオと家賃上昇シナリオで、5年後・10年後の純利益を計算しました。
| 物件 | 5年後 | 10年後 | ||
|---|---|---|---|---|
| 据え置き | 上昇 | 据え置き | 上昇 | |
| 東京① | 約206万円 | 約369万円 | 約235万円 | 約610万円 |
| 東京② | 約−352万円 | 約92万円 | 約−321万円 | 約397万円 |
| 川崎①(新築) | 約−338万円 | 約67万円 | 約−367万円 | 約294万円 |
| 川崎②(9年) | 約−179万円 | 約207万円 | 約−232万円 | 約414万円 |
| 大阪① | 約238万円 | 約393万円 | 約249万円 | 約602万円 |
| 大阪② | 約−312万円 | 約73万円 | 約−428万円 | 約210万円 |
結果は明確でした。家賃を据え置いた場合、6室のうち4室が5年後・10年後ともに赤字になります。一方、家賃を上昇させた場合、6室すべてが5年後・10年後ともにプラスに転じます。
東京①・大阪①のように、既に1万円以上の家賃アップ(東京①11,000円アップ、大阪①16,500円アップ)を実現している物件は、それだけで金利上昇の影響を吸収できる体力があり、家賃据え置きでもプラスを維持できています。さらにここから値上げできれば、上乗せでより大きな利益が見込めます。
一方、まだ大幅な家賃アップが実現できていないその他の物件に関しては、今後市場家賃までに家賃を上げられるかどうかが、黒字と赤字の分かれ目になっています。
東京①と大阪①の家賃アップの交渉に関してはこちらで詳しく紹介しています。
👉 東京① 家賃11,000円アップで物件価値377万円アップ|入居者との賃料改定交渉を公開
👉 大阪① 家賃16,500円アップで物件価値535万円アップ|入居者との賃料改定交渉から入居募集まで公開
利回りが±0.1%動いたらどうなるか
もう一つ、気になるのが将来の利回りです。以前の記事で、東京23区のワンルームの実質利回りが、2017年の6.88%から2024年には4.99%まで低下してきたというデータを紹介しました。
👉 東京の家賃はまだ上がる?|6室保有して感じる「家賃上昇時代」の始まり
この先、利回りがさらに下がっていくのか、それとも金利上昇を受けて反転するのか、正直なところ誰にも正確には分かりません。だからこそ、今回は売却時点の利回りを±0.1%動かした場合の感応度も計算してみました。
なお、以下はすべて家賃上昇シナリオ(家賃を上げた場合)で計算しています。家賃上昇が不動産投資における重要なポイントであるため、据え置きシナリオでの利回り感応度は割愛しています。
家賃上昇シナリオ・5年後の利回り感応度
| 物件 | 利回り良化(−0.1%) | 現状維持 | 利回り悪化(+0.1%) |
|---|---|---|---|
| 東京① | 約451万円 | 約369万円 | 約292万円 |
| 東京② | 約194万円 | 約92万円 | 約−18万円 |
| 川崎①(新築) | 約141万円 | 約67万円 | 約−3万円 |
| 川崎②(9年) | 約273万円 | 約207万円 | 約144万円 |
| 大阪① | 約447万円 | 約393万円 | 約342万円 |
| 大阪② | 約113万円 | 約73万円 | 約35万円 |
5年後という短い期間だと、東京②・川崎①(新築)は、家賃を上げていても利回りが0.1%悪化するだけで赤字に転落します。
10年後の利回り感応度(家賃上昇シナリオ)
| 物件 | 利回り良化(−0.1%) | 現状維持 | 利回り悪化(+0.1%) |
|---|---|---|---|
| 東京① | 約694万円 | 約610万円 | 約530万円 |
| 東京② | 約492万円 | 約397万円 | 約295万円 |
| 川崎①(新築) | 約370万円 | 約294万円 | 約222万円 |
| 川崎②(9年) | 約482万円 | 約414万円 | 約349万円 |
| 大阪① | 約657万円 | 約602万円 | 約549万円 |
| 大阪② | 約251万円 | 約210万円 | 約170万円 |
一方、10年後まで保有すれば、この2物件を含めた全室が、利回りがどちらに動いてもプラスを維持します。
家賃を上げるかどうかの差は、利回り0.1%の変動よりもはるかに大きい
ここが今回一番重要なポイントです。
利回りが±0.1%動くことによる純利益の変動幅は、物件によって数十万円〜150万円程度でした。一方、家賃を据え置くか上げるかによる差は、物件によって300万円〜700万円近くにもなります。
利回りがこの先どう動くかは、正直コントロールできません。ただ、家賃を上げられる物件を選び、実際に交渉して上げていくことは、自分の努力でコントロールできる部分です。今回の計算は、「利回りの予測」より「家賃を上げる努力」の方が、結果への影響がはるかに大きいことを、数字で裏付ける結果になりました。
一般的な家賃の上げ方・交渉の考え方についてはこちらで詳しく解説しています。
👉 投資用マンションの家賃を上げる方法|交渉テクニックと進め方を解説
6室合計で見ると
家賃上昇シナリオについて、6室合計の純利益と、自己資金に対する単純年率も計算しました。
| 時点 | 利回り良化(−0.1%) | 現状維持 | 利回り悪化(+0.1%) |
|---|---|---|---|
| 5年後合計純利益(単純年率) | 約1,619万円(39.0%) | 約1,201万円(28.9%) | 約792万円(19.1%) |
| 10年後合計純利益(単純年率) | 約2,946万円(18.2%) | 約2,525万円(15.6%) | 約2,115万円(13.1%) |
個別の物件では、利回り悪化によって赤字に転落するケースもありましたが、6室合計で見ると、どのシナリオでも一貫してプラスです。これは、複数室に分散して保有していることの効果がそのまま数字に表れている結果だと思っています。
※ここでいう単純年率はIRRや年間利回りではありません。自己資金に対し、シミュレーション上の累計純利益を保有年数で単純に割った参考値です。
この計算は、あくまで「業者買取10%」を前提にしている
最後に、大事な前提を一つ確認しておきます。
今回のシミュレーションでは、売却時に業者買取(理論値から10%の業者利益を差し引く)を前提にしています。ただ、これはあくまで一つの売り方であって、絶対的な条件ではありません。
実際に売却を検討する際、私は1社だけに「いくらで買えますか」とは聞きません。複数の買取業者から、買取価格・仲介ならいくらか、を聞くようするつもりです。
今回のシミュレーションでは、業者買取を想定し、収益還元法で算出した理論価格から10%を控除しています。この10%はあくまでシミュレーション上の目安であり、実際の買取価格は業者によって異なります。複数社に相見積もりを取ることで、より高い価格で売却できる可能性もあります。
一方で、今回算出した価格が将来の売却価格として保証されるわけではありません。家賃や市場利回り、不動産市況などによっては、試算を下回る可能性もあります。そのため、今回の結果は「将来これだけの利益が出る」という予測ではなく、一定の前提条件を置いた場合に、5年後・10年後の出口がどうなるかを見るためのシミュレーションとして捉えてください。
まとめ|家賃を上げる努力が、一番効く
今回、実際に保有している6室について、5年後・10年後に売却した場合の手残りを、家賃・金利・利回りの前提を変えながら計算してみました。
- 家賃を上げられれば、6室すべてが5年後・10年後ともにプラスになる
- 利回りが±0.1%動くことの影響より、家賃を上げるかどうかの影響の方がはるかに大きい
- 6室合計で見ると、個別の赤字リスクは分散効果で吸収され、どのシナリオでも一貫してプラスになる
- そして、今回前提にした「業者買取10%」という条件自体も、相見積もりを取ることでもっと良くできる可能性がある
利回りの先行きは正直分かりません。ただ、家賃を上げる努力と、売却先を比較する努力は、どちらも自分でコントロールできる部分です。今回の計算を通じて、改めてそのことを実感しました。
金利上昇局面での考え方についてはこちらもあわせてご覧ください。
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