この記事で分かること
- なぜ「家賃が安い物件」を、あえて狙って買うのか
- 「安い理由」の見分け方は、駅距離や設備ではなく同条件比較であること
- 「自分が住みたい物件」と「買うべき物件」が別である理由
- 家賃1万円の差が、実は数百万円の価値インパクトを持つ理由
- 値上げが「確実な権利」ではなく「交渉」である理由
「家賃が安い物件」は普通なら避けたくなる
同じ価格帯の物件を比較するとき、多くの人は「家賃が高い物件の方が得」だと考えます。月々の収入が多い方が、単純にお金を生んでいるように見えるからです。
私も最初はそう思っていました。3,000万円で家賃10万円の物件と、同じ3,000万円で家賃11万円の物件があれば、普通は11万円の方を選びたくなります。
ただ、6室買った今は、むしろ最初に「なぜこの物件は、家賃が安いんだろう?」と考えます。
実際に6室すべての家賃・物件価値上昇の実績はこちらにまとめています。
👉 購入した6室、全データ公開|東京・川崎・大阪、値引き・値上げ・物件価値の実績まとめ
安い理由が「物件の弱さ」なのか「ただ放置されているだけ」なのか
ここで見るべきは、駅からの距離や設備の古さといった「物件そのものの条件」ではありません。同じ条件(同じエリア・同じ建物・同じ駅距離・同じ間取り)の中で、家賃が相場より安いかどうか、これだけです。
駅から遠くても、そのエリアの相場自体が安いなら、それは単に「安いエリアの適正な家賃」であって、値上げの余地があるとは限りません。逆に、その建物・そのエリアの中で明らかに家賃が据え置かれているなら、駅距離や築年数がどうであれ、値上げの余地がある良い物件だということです。
実際に確認すべきなのは、
- 同じマンション・同じエリアの新規募集より明らかに安い
- 周辺の家賃相場自体は上がっている
- 更新が近い
といったポイントです。物件のスペックが低いから安いのではなく、同じ条件の中で家賃だけが昔の水準に取り残されている、というケースを狙っています。
「自分が住みたい物件」と「買うべき物件」は別
ここでもう一つ、大事な視点があります。「自分が住みたいと思う物件」と「投資として買うべき物件」は、必ずしも一致しません。
例えば、次の2つの物件を比べてみます。
- 物件A:神奈川県、駅徒歩15分、家賃8万円(周辺相場9万円)
- 物件B:東京都内、駅徒歩5分、家賃10万円(周辺相場9万円)
自分が実際に住むとしたら、駅から近く都内にある物件Bの方に住みたいと感じるかもしれません。駅近・都心という条件は、生活する上での快適さに直結するからです。
ただ、投資として見ると、この2つはまったく違う条件です。物件Aは相場より1万円安く、値上げの余地があります。一方、物件Bは相場より1万円高く、むしろ今の家賃を維持できるかどうかという心配の方が先に立ちます。
駅近・都心・きれいな内装というのは、確かに人が住みたいと思う条件です。ただ、それはすでに家賃や物件価格に織り込まれていることが多く、投資として見たときの伸びしろとは別問題です。私が見ているのは、「自分が住みたいかどうか」ではなく、「今の家賃が、その物件・そのエリアの適正水準に対してどれだけ安いか」という一点です。
実際にそれを狙って買ったらどうなったか
理屈だけでなく、実際に自分の物件で起きたことを書きます。
東京の物件は、購入時から周辺相場と比べて家賃に割安感があると見ていました。実際に購入後、家賃を11,000円値上げすることができました。
👉 家賃11,000円アップで物件価値377万円アップ|入居者との賃料改定交渉を公開
大阪の物件も、同じマンション内の賃料水準と比べて割安感があり、退去をきっかけに16,500円の値上げが実現しました。
👉 家賃16,500円アップで物件価値535万円アップ|入居者との賃料改定交渉から入居募集まで公開
「理屈としてそう思う」だけでなく、実際に買って、実際に値上げまでできた。ここが大事なポイントです。
家賃1万円の差は「年間12万円」だけではない
家賃を1万円上げても、年間12万円の収入増でしょ、と思うかもしれません。ただ、投資用マンションでは、それだけでは終わりません。
仮に還元利回り4%だとすると、
12万円 ÷ 4% ≒ 約300万円
NOI(純収益)が年間12万円増えることによる、収益還元法上の価格へのインパクトは、単純計算で数百万円規模になります。
👉 不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み
だから、家賃1万円の値上げ余地というのは、「月1万円多くもらえる」という話だけでは済みません。
「毎月赤字でも買う」の答えが、ここにある
前回、「毎月赤字でも、トータルリターンで見る」と書きました。今回の記事では、その具体策を一段掘り下げています。
👉 毎月赤字でもワンルームを6室買った理由|持ち出し48万円で残債329万円減
家賃を上げれば、
月次CF改善+元本返済を家賃でカバーしやすくなる+収益還元価格上昇+出口の利益拡大
という多重効果が生まれます。だから、購入時点でCFが少し悪くても、改善余地が明確なら買うことがある、というのが私の判断基準です。
ただし「値上げできるはず」で買うのは危険
ここで一度ブレーキをかけます。
「周辺相場が11万円だから、この部屋も11万円にできる」とは限りません。大事なのは、エリア全体の平均家賃よりも、同一マンション・似た間取り・同じ階数・同じ駅距離という、できるだけ条件を揃えた比較です。条件がずれた比較をしてしまうと、「本当に割安なのか」を見誤ります。
さらに既存入居者がいる場合、いきなり相場まで値上げできるとは限りません。値上げできなかったとしても、その価格で投資として成立するかどうかも見ておく必要があります。
値上げは「交渉」であって「確定した権利」ではない
これも大事な点です。「相場より安い=差額を必ず回収できる」わけではありません。
実際に値上げが実現するかどうかは、入居者との交渉・タイミング(更新時か退去時か)・管理会社の対応次第で変わります。以前書いた通り、管理会社は交渉そのものを代行してくれるわけではなく、あくまでオーナーが主導して進める必要があります。
👉 家賃の3.5%も払う価値はある?|6室保有して分かった賃貸管理会社の仕事
私が実際に成功した東京・大阪のケースも、確実に上がる保証があったわけではなく、交渉の結果として実現したものです。
家賃の上げ方についてはこちら詳しく解説しています。
👉 投資用マンションの家賃を上げる方法|交渉テクニックと進め方を解説
結論:「高く貸せる物件」より「安く貸されている良い物件」
私が探しているのは、単に家賃が高い物件ではありません。本来もっと高く貸せるのに、何らかの理由で安く貸されている良い物件です。
購入時点では数字が少し悪く見えても、その差を自分で埋めることができれば、毎月の収支と出口の両方を改善できます。
東京と大阪の2室の家賃値上げを経験してから、私は「現在の家賃」以上に「本来いくらで貸せるのか」を見るようになりました。
物件が本当に割安かどうかは、第三者の視点で確認することもできます。物件選びで、家賃の妥当性や値上げ余地について相談したい方は、お気軽にご相談ください。

