この記事で分かること
- 「物件価格」には、実は複数の価格があるということ
- 収益還元法で出た金額が、誰にとっての価格なのか
- 業者買取の価格がなぜ再販想定価格より低くなるのか
- 買取と仲介、どちらで売るかによる違い
- 家賃を上げることが、なぜ売却価格の天井そのものを押し上げるのか
「この物件、収益還元法で計算すると3,000万円です」
不動産投資をしていると、こういう説明を受けることがよくあります。ただ、この3,000万円という数字、実は「自分がいつでも3,000万円で売れる金額」ではありません。
今回は、物件価格がどう決まっていて、実際に売却するときにいくら手元に残るのか、という「価格の旅」を整理してみます。
6室すべての値引き・値上げ・物件価値上昇の実績はこちらにまとめています。
👉 購入した6室、全データ公開|東京・川崎・大阪、値引き・値上げ・物件価値の実績まとめ
そもそも「物件価格」には複数の価格がある
同じマンションの同じ部屋でも、
- 収益還元法などから考える理論上の価値
- 次の投資家が買う再販価格
- 買取業者がオーナーから買う価格
- 仲介で実際に成約する価格
これらは同じではありません。「物件価格はいくらですか」という質問には、実は一つの答えがないということを、まず最初に理解しておく必要があります。
収益還元法で決まる価格は「誰にとっての価格」なのか
収益還元法の考え方については、以前詳しく書きました。
👉 不動産投資で勝つための収益還元法|家賃1万円上げると物件価値が300万円上がる仕組み
年間家賃を利回りで割り戻して出てくる価格は、基本的には「その利回りなら、次の投資家がいくらで買うか」を考えるための価格です。つまり、
家賃 → 利回り → エンドの投資家が買える価格
という構造で成り立っています。ちなみに、新築で購入する場合はこの構造にもう一段、デベロッパーの利益(新築プレミアム)が価格に上乗せされています。
👉 新築は基本NG、でも1室だけ買った理由|6室購入者が見る新築と中古の境界線
では、業者はなぜ再販想定価格そのままで買ってくれないのか
ここが今回の記事の核心です。
仮に再販想定価格3,000万円の物件があったとして、買取業者がオーナーから3,000万円でそのまま買い取ってしまうと、業者側には利益が残りません。業者は買い取った後、次の投資家に再販するまでの間、保有コストや金利負担、再販できないリスクを引き受けています。そのため、
再販想定価格 − 利益・再販コスト・リスク分 = 買取価格
という形で、買取価格は再販想定価格から一定のマージンを差し引いて決まります。
私自身がこれまで売却査定を取ってきた感覚では、再販想定価格から1割前後差し引かれるケースが一つの目安でした。もちろんこれは物件や業者によって幅があり、必ず一律の割合で決まるわけではありません。
だから「物件価値が300万円上がった=売却益300万円」ではない
これは、これまでの家賃値上げの記事とも関わってくる話です。
これまで、家賃を月1万円上げれば、年間12万円の増収になり、利回り4%なら理論上の物件価値は約300万円上がる、と書いてきました。ただ、この理論上の300万円が、そのまま自分の手取りの300万円になるわけではありません。
再販想定価格が2,700万円から3,000万円に上がったとしても、業者買取ならそこにマージンが入るため、オーナーが実際に受け取れる売却価格の上昇幅は、300万円よりも小さくなる可能性があります。
実際に買取査定を取った際の理論値との検証結果はこちらです。
👉 購入半年で含み益240万円|東京の物件の家賃を上げたので買取査定を取ってみた話
👉 購入半年で含み益439万円|大阪の物件も買取査定を取ってみた話
「買取」と「仲介」で価格が違う
売り方には大きく2パターンあります。
- 業者買取:オーナー→買取業者→次の投資家、という流れ。業者が間に入る分、価格は再販想定価格より低くなりますが、早く・確実に売れます
- 仲介:オーナー→仲介会社→次の投資家、という流れ。オーナー自身がエンド価格に近い金額で売れる可能性がありますが、買い手も不動産会社から買った方が良くなってしまうケースも多いため買い手が見つかるまで時間がかかり、希望価格で売れる保証もなく、仲介手数料もかかります
「高く売れる可能性」と「確実・早く売れること」は、トレードオフの関係にあります。
家賃を上げると「再販価格の天井」そのものが上がる
例えば家賃8万円、利回り4%なら、96万円 ÷ 4% = 2,400万円
家賃9万円なら、108万円 ÷ 4% = 2,700万円
家賃を月1万円上げることで、エンド価格の理論値は300万円上がります。業者買取価格もこの再販価格を起点に考える以上、家賃を上げることは、単に月々の収入が1万円増えるだけの話ではなく、業者が買い取れる価格の上限そのものを押し上げることにつながります。
👉 家賃11,000円アップで物件価値377万円アップ|入居者との賃料改定交渉を公開
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売るときも、1社だけに聞かない
私は売却を検討するとき、1社だけに「いくらで買えますか」とは聞かないようにするつもりです。
複数社から相見積もりを取り、各社に
- 買取ならいくらか
- 仲介ならいくらで売れそうか
を聞くということです。実際にやってみると、同じ物件でも、業者ごとに提示額がまったく違うと聞きます。この価格の違いこそが、ここまで説明してきた「買取マージン」の差そのものです(再販想定価格については、業者に聞いても教えてもらえることはまずありません。市況感や相場の肌感覚を参考にしながら、自分なりに見積もることが大事だと考えています)。
この相見積もりを取る際も、私はセカンドオピニオンを活用するつもりです。複数の買取業者から出てきた条件を並べても、その数字が市況的に妥当な水準なのかは自分だけでは判断がつきません。
このセカンドオピニオンは日頃から相場を見ている分、市況感を踏まえた視点をもらえるので、それを参考にしながら自分でも納得感を持って比較ができると考えています。
購入時だけでなく、売却時の判断材料としてもかなり頼りになる存在です。
👉 不動産投資で損しないために|買う前に相談すべきセカンドオピニオンサービス【実体験レビュー】
👉 その物件、本当に買って大丈夫?|セカンドオピニオンを取って良かった4つのこと
まとめ|物件価格には「価格の旅」がある
「ワンルームマンションの価格はいくらですか」という質問には、実は一つの答えがありません。
家賃から決まる理論価格があって、そこから次の投資家への再販価格が決まり、そこから業者の利益・コスト・リスク分を引いた買取価格があって、最終的にはローン残債・売却費用・税金を差し引いた手残りがあります。
家賃
↓
収益還元法による理論価格
↓
エンド投資家への再販価格
↓
− 業者の利益・コスト・リスク
↓
オーナーへの買取価格
↓
− ローン残債・売却費用・税金
↓
最終的な手残り
このつながりを理解しておくと、「物件価値が上がった」というニュースを聞いたときも、それが実際にいくら手元に残るのかまで、一段階深く考えられるようになると思っています。
5年後・10年後の売却シミュレーションについてはこちらもあわせてご覧ください。
👉 ワンルームマンション6室、5年後・10年後に売ったらいくら?|家賃・金利・利回りでシナリオ分析
今の家賃にまだ値上げ余地があるのか、今売ったらいくらの含み益が出るのか。こうした現状の確認から、実際に売却を検討する段階の相見積もりまで、お気軽にご相談ください。
